【LIVE REPORT】NICOLAS、東京キネマ俱楽部にて開催した単独大公演「曼珠沙華」で証明した不屈の“クソッタレ精神”。「オレたらが最強だっていうことを見せていく」
NICOLAS
単独大公演「曼珠沙華」
2024年9月14日(土) 東京キネマ倶楽部
9月14日、東京キネマ俱楽部にて開催された単独大公演「曼珠沙華」。これは、NICOLASにとっての“Xデー”だった。
本公演を発表したちょうど1年前、当時のNICOLASは新メンバーにHAYATE(Dr)を迎え、バンドとしてのターニングポイントを迎えていた。さらに遡ること2022年11月、彼らは一度東京キネマ俱楽部にてワンマンライブを行っている。それは『KUSOTTARE IS BACK 2022“天獄への階段”』というワンマンツアーのファイナル公演でのことだったが、このツアー開始直前に前任ドラマーの脱退が発表されたことから、その窮地に手を貸したのが前身バンド(ゴシップ)時代に共に活動していたこともあるHAYATEであり、メンバー談では「何とか最後まで回りきった」という状況でもあった。以降、現体制を整えて本格的に活動を開始したわけだが、そのタイミングで「1年後にどこやりたい?」と先の照準を定める際にメンバーが口を揃えて「キネマじゃない?」となったというのも、この一連の流れを踏まえていただくと納得いただけるだろう。
まさしく、意気衝天と臨んだ単独“大”公演。新衣装を纏っての登場に続き、ド頭から新曲「曼珠沙華」を披露するという初お披露目二連発という豪華仕様で勢いづくと、「VITAL SIGNS」「DOWNWARD SPIRAL」とノンストップに畳みかけていき、いずれも凄まじい爆発力で会場を席巻していく。まるでそれを統率するかのようにSAKU(Vo)はセンターに立ちはだかり、身に着けている制帽がその存在感を見事に象徴していた。
「キネマ!『曼珠沙華』、1年前に掲げたこのキネマ倶楽部という場所で今日オレたちはライブをはじめました。あっという間の1年だったかもしれない。だけど、きてしまった以上、最後までオレたちと一緒に楽しみまくりましょう!」(SAKU)
気合いを込めた挨拶をかわすと、SATSUKI(Gt)のソリッドなギターリフが映える「FAKE」や、激しさの中にもメロディアスさが際立つ「モナリザ」に湧き立つ場内。さらに、HAYATEのレギュラーグリップなジャズドラムスタイルとミラーボールが輝くキャバレーな会場にマッチしたジャジーな「罠」に続いて、メロウなスケールに収まらないエモーショナルさを感じられた「終末時計」では、AKANE(Gt)がリズム隊を挑発してグルーヴを高めていく場面も。各曲のカラーを味わえる中、「悪夢のお時間です」という言葉で導入した「INSANITY NIGHTMARE」では、ひとクセあるギターフレーズがオーディエンスを存分に惹きつけながら、一層気分を昂らせていく。
2年前にこの会場へ立ったときのことをSAKUは「完全ではなかった形で臨んだ」と振り返ったが、体制を整えたNICOLASにとって、まず攻略すべきポイントはここ東京キネマ俱楽部であったとも言える。そこへ挑めたことに対する感謝の気持ちを込めて「ECHO OF SILENCE」をじっくり届け、最後をZERO(Ba)が時計の秒針の音に合わせて一音一音刻んでいったシーンはまるで、これまでの軌跡の重みを感じさせるようでもあった。このように1曲ずつ充実感を高めながら演奏を進め、静と動を巧みに交えた「[décadence]」、AKANEがギターソロをかまして「「廃論破」[Burst ver.]」へ突入すると、ロジカルなギミックに観客を乗せていくのもNICOLASらしいところ。ここでの熱量を「奇想天外ブラインドラブ」へ繋げ、SAKUはSATSUKIへ制帽を被せると、サブステージに上がったり頭を振ったりとメンバーとオーディエンスを扇動するようにアグレッシブな様子を見せ、まさに曲中にもある青春という檻から抜け出さんとするハチャメチャぶりが痛快だった。
ライブも終盤に差し掛かったころ、メンバー全員の言葉を聞くことができた。HAYATEはサポートとして立った2年前のステージにも触れながら、「今日は入りをしたときに、みんなでいい1日を作るんだなと思った。いつも以上に大切な日になって、それをみんなと一緒に分かち合えているのがミュージシャン冥利に尽きる」と、ニュードラムを用意して臨んだ自身の熱の入れ具合と共に気持ちを伝えていた。ZEROは2年間をあっという間だったとしながらも、「あっという間と思えるのはバンドがいい状態だからじゃないかなと、勝手に思ってます」と話し、SATSUKIは感謝と同時に「前回のキネマ俱楽部から、自分たちの環境にも変化があって学ぶことが多かった。たくさんの人に観てもらえて、バンドをやっていてよかった」ということに加え、今後への意欲も示す頼もしい言葉を残していた。AKANEは、本公演を発表した1年前からの日々を「早いというか、遅いというか、この気持ち悪い感じ……わかる? きっと充実してるからこそなんでしょうけど」と、月日が経つのが早いと話した面々に対抗するAKANE節を炸裂させて笑いを誘っていた。このときSAKUが語ったのは、バンドの今後に対するポリシー。「ここ最近バンドが前に進んで行こうと考えるときに、もっとこうしたいっていう、自分たちで大きく地図を描くようになりました」と、こうした感情が表れるようになったのは応援してくれる人々のおかげだと感謝を述べつつ、この東京キネマ俱楽部に立った意味もその一環だと強く印象付けていた。
「怒濤ノ羊」から駆け抜けたラストスパートで起こったのは、一層破壊力を持った盛り上がり。晴れやかな激情を駆り立てた「Delighted」や、「クソッタレ イズ バック」ではNICOLASのシンボル的マインドを扇子が揺れる中であっぱれと言わんばかりに謳歌していく。そして、「まだオレたちには見たい景色があります。オマエたちの信じるものはなんだ!? オレたちの信じるものはこれだ!」と「卍」で目の前に広がったのは、集大成ともいうべき狂喜乱舞。カオスながらも未来を感じさせる曲でライブが締めくくられる中で感じたのは、これまで相手にわからせるまでストライクゾーンをめがけてただただストレート球を投げ込んでいたガムシャラな姿勢もとても魅力的だったが、何を目指し何のために闘うのかを明確にしてステージに立つNICOLASには過去とは桁違いの強靭さがあったということ。この現象を大人になったといえばそうなのだが、彼らに“大人”という言葉は少し似合わない気がしてなかなかしっくりくる言葉が見つからない。しかし、NICOLASはそれでいいのだ。何にも当てはまらない、反骨精神むき出しの“クソッタレ”精神を研ぎ澄ませながら独自路線を貫いていく、そういうことを美徳するバンドであればいいのだということを改めて思い知らされたのである。
アンコールで登場したメンバーは、「少しでも自分たちの気合いが伝われば」と新曲「曼珠沙華」を紹介したうえで再びプレイ。なお、「曼珠沙華」は11月13日にリリースが決定しており、「もう逃げません」という心強い一言を添えながら、この新曲をもって来年に大阪と名古屋で開催が決定した単独大公演に臨むことを宣言した。「変わらないまま変わり続ける」という意志を示して披露した「セピア」や、ライブという場が力になることを熱く伝えてNICOLASの始まりの曲でもある「真昼の蜃気楼」を演奏した場面も印象的だったが、現体制のスタートを飾った「PERFECT FALL」でゴールドテープが宙を舞う中、ステージ中央で肩を寄せ合うメンバーの姿が“バンドとは”を表す極めつけの情景であったように思う。そして「遮断」まで全7曲を披露してアンコールを終えるも、鳴りやまない声に「どうした!? まだやんのかい!?」と再び登場したメンバーは「悪童会 -クソッタレ行進曲-」とメンバーコールを通し、最後は再び「遮断」で白熱した情景を巻き起こした。恐らくオーラスの「遮断」は完全に衝動的なもので、これは前回の東京キネマ俱楽部公演のラストを彷彿させるものでもあった。これが当時の上書きを意図していたのかはわからないが、確実に現在のNICOLASが繰り広げたライブは“最高”の太鼓判を押して然るべきものだったことは間違いない。そんな今のNICOLASお伝えするのに一番相応しいSAKUの一言を借りて締めくくりたいと思う――「オレたちが最強だっていうことを見せていくぞ、オレたちがNICOLASだ。オレたちと一緒に、上を目指しましょう」。
Report◎Ayako Hirai
Photo◎A.Kawasaki
-セットリスト-
- 曼殊沙華
- VITAL SIGNS
- DOWNWARD SPIRAL
- FAKE
- モナリザ
- 罠
- 終末時計
- INSANITY NIGHTMARE
- ECHO OF SILENCE
- [décadence]
- 「廃論破」[Burst ver.]
- 奇想天外ブラインドラブ
- 怒濤ノ羊
- Delighted
- クソッタレ イズ バック
- 卍
En-1. 曼殊沙華
En-2. ブリリンアントワールド
En-3. セピア
En-4. 真昼の蜃気楼
En-5. 木漏れ日
En-6. PERFECT FALL
En-7. 遮断
WEn-1. 悪童会 -クソッタレ行進曲-
WEn-2. メンバーコール
WEn-3. 遮断